安斉食品(お豆腐)

 

三代続く手づくりの味 

 

 朝6時、南区川沿で安斉食品の朝は始まる。1日に作る豆腐はおよそ300丁。南区で唯一の手作り豆腐の店だ。

 

 創業1949年の老舗豆腐屋、安斉食品。創業当初から変わらぬ味わいが3代目の安斉徹さんに受け継がれている。扱っているのは豆腐4種類(もめん豆腐、絹ごし豆腐、寄せ豆腐、ざる豆腐)、揚げ物3種類(油揚げ、厚揚げ、がんもどき)、白滝、こんにゃく。一品につきおからが300gついてくるサービスもしている。全てが人気の商品だそうだ。

 

3代目安斉徹さん
店主の安斉徹さん

 

 安斉食品の豆腐は札幌の学校給食にも使われており、優しい味わいと柔らかな舌触りが特徴的だ。

 

 その豆腐の引き立て役は藻岩山の伏流水。冬、藻岩山に降り積もった雪が、春になり地下へと潜り込む。安斉食品では店の地下に井戸を掘り、ミネラルが豊富に含まれた水を豆腐にたっぷり使っている。水道水では様々な成分が含まれ、本来の豆腐の味を変えてしまう。安全で美味しい豆腐が評価され過去に数回、北海道知事賞に選ばれたことがある。

 

商品の豆腐と揚物

 

 豆腐の製作はほぼ手作業で行っているため1日に作れる量は少なくなってしまう。それでも丁寧に心を込めて作ることで作業性よりも味を優先させている。1日の販売数は少なくても全品200円未満のリーズナブルな価格。さらに毎月12日はとうふの日で全品100円の特別価格で提供している。

 

 また、朝から作り始められる豆腐は、昼過ぎに全ての工程を終える。豆腐作りにおよそ6時間、店内の掃除に2時間かけるそうだ。老舗店であるにもかかわらず隅々まで新品のように綺麗な店内が丹念な心がけを表していた。

 

 老舗だからこそ、地域の変化をよく見てきた安斉食品。たくさんの店が閉じ、代わりに新しい店がやってきている。経営者としてはお客さんの流れがこっちにくるのは嬉しいが、それよりも寂しい、と安斉さんは言う。

 

 藻岩地区は人が多くて店が少ない。店を営みやすいのは強みだが、もっと賑やかになることを望んでいる。バスやスーパー、大型ショッピングモールもあり、自然と街が調和した住みやすいところ。子供がもっと来店するようになるような街の活性化を望んでいた。

 

安斉食品 手造りとうふ

 

文・写真:安藤里(東海大学国際文化学部デザイン文化学科)  

 (2021/9/10)

 

安斉食品

定休日:日曜日

TEL. 011-571-6703