人間愛にあふれた居場所づくり
近年の少子高齢化の影響で、お寺の役割も変化し始めています。地域交流やイベントの場として活用されている浄土真宗本願寺派の連峰山宝流寺(札幌市南区川沿9条2丁目)を訪ねました。

宝流寺の前身は、八垂別(はったりべつ:現在の北の沢・中の沢・南沢・川沿地区)の布教所でした。1902年(明治35年)、この地に本格的な入植が始まる少し前のことです。宝流寺の創設は1922年(大正11年)ですが、布教所時代から合わせると123年もの歴史があります。
そんな歴史ある宝流寺ですが、玄関を入るとアロマのいい香りが漂い、正面ロビーにはソファやカウンター席、有料でも格安のドリンク、雑誌などもあって、まるでカフェのような雰囲気に驚きます。
ご住職の柴田範尚さん(61)と坊守(ぼうもり:住職の妻)のさおりさんは、宝流寺を「みんなの安心・安全な居場所」「地域交流の場」「何かやりたい人達の自己実現の場」にしたいと、2年前から広い自習室を開設しました。そこは太極拳や寺ヨガ、リラクセーションの音浴会、囲碁会など、さまざまなサークル活動やイベントの場に提供しています。日々、問い合わせや相談の電話、来客があり、地域の皆さんから頼りにされているのが分かります。

自習室に高校生の姿が
1階の自習室には、高校生らが毎日のように立ち寄ります。まず座布団を敷いて昼寝をする生徒もいて、「いまの高校生は疲れているのね」と、さおりさん。
夏休みには、朝から晩まで自習室で過ごす学生もいます。取材時に利用していた藻岩高3年の小西健瑠(たける)さんは「高3の夏休みの終わりから、放課後、毎日9時まで利用させてもらっています。ご住職と奥さまがとても親切なんです」と教えてくれました。この自習室は、勉強の場だけでなく利用者にとって大事な「居場所」にもなっています。
さおりさんは、「子どもたちは家族同然なんです。子どもたちが安心して過ごせる場になってほしいですね」と優しい面持ちで話してくれました。
お寺には病院や福祉施設、学校の役目があった

お寺の役割について柴田住職は「聖徳太子の時代(574~622年までの飛鳥時代初期)は、お寺はもともと、病院や薬局・福祉施設、学校などの役目もあって、本来、そういうものなんです」と話されます。また、仏教は固いと敬遠されがちで、興味があっても近寄りがたいといわれるため、ライブ配信で若者の質問に答えたり、お寺に入りやすい雰囲気づくりに心がけているそうです。
「今後は、仏教についての疑問やお寺について、少しずつ知ってもらえるようにしたいですね」とも話されていました。
お寺を身近に感じてもらう工夫を凝らしながら、坊守のさおりさんも、長男、長女、次男のご家族五人全員が僧侶の資格を取得しています。これはコロナ禍で、もし住職が倒れるようなことがあっても、責任を持ってお寺の役目を果たせるように備えなければ地域の皆さまに申し訳ない、という思いからだといいます。開拓期から人々の心の支えになってきたお寺を、家族全員で守っていこうという決意が感じられました。
宝流寺のご住職ご夫妻の根底にあるのは人間愛。「ありのままの自分でいい」と受け入れてくれる場所、みんなにとって「安心安全な場所」でありたいというお二人の思いが、宝流寺を支えていました。
写真・文:山日 裕恵 もいわ塾4期生
連峰山 宝流寺(れんぽうざん ほうりゅうじ)の問い合わせ先
〒005-0809 札幌市南区川沿9条2丁目1−17
電話 011-571-6104
ホームページ https://www.ho-ryu.com/
