札幌市立大生が藻岩の子育てを応援!「ないてもい~わよ、もいわ」プロジェクト

札幌市立大学生が藻岩地区をブランディング

 12月16日、札幌市立大学 芸術の森キャンパスのアリーナで開催された「学部連携演習」の発表会に参加をしてきた。

 「学部連携演習」とは札幌市立大のデザイン学部と看護学部の学生が連携をしてグループを作り、南区内の地域が抱える課題を調査し、学生ならではの観点から様々な提案をしていく実践型の授業だ。

 南区内10の地域(真駒内、芸術の森、澄川、藻岩下、藻岩、南沢、石山、藤野、簾舞、定山渓)ごとでチームに分かれた学生たち。藻岩チームは、デザイン学科9名(井原捷⼈ 佐井綾花 ⻑⾕川りさ⼦ 松永彩花 吉⽥奈桜 尾﨑⼤輔 須藤和花 半⽥愛 ⼭⽥咲⽻)と看護学科9名(井澤美怜 岩佐暖⾳ 上野優⽉ 菅⾕光 ⽵⾕愛梨 塚原凜果 古澤梨緒 本間陽菜⼦ 村上朱理)の計18人で構成されたメンバー。(指導教員:デザイン学部・大渕一博 看護学部・工藤京子)

 発表タイトルは「ないてもい~わよ、もいわ」。藻岩の子育て支援を自分ごと化するブランディング提案だ。

子育てに優しいまち、それは泣きたいときに泣けるまち。赤ちゃんも、お母さんだって。

 冒頭、発表会はバスで泣く赤ちゃん、困るお母さんの芝居から始まった。そこに「ないてもい~わよ、だってここ藻岩だから」という周囲からの声が聞こえる。子どもが成長する過程や子育てをするお母さんお父さんを地域全体で見守るような、子育て世代に優しい街を提唱している藻岩地区を「ないてもい~わよ、もいわ」という素敵な表現で表してくれた学生たち。

 このないてもい~わよと伝える対象は赤ちゃんでもあり、お母さんお父さんにも向いていると言う。

 学生たちがどんな調査をし、「藻岩の子育て支援を自分ごと化するブランディング」にたどり着いたのか、発表で使われたスライドを提供してもらい、学生たちのプロジェクトを紹介していきたい。

発表をするデザイン学部3年の佐井綾花さん(左)と看護学部3年の古澤梨緒さん(右)
発表をするデザイン学部3年の佐井綾花さん(左)と看護学部3年の古澤梨緒さん(右)

仮説から3つの調査・検証 そして目標設定へ

 藻岩チームには最初、「藻岩の⼦育て情報の充実強化」という課題が与えられた。そこからHP「もいわ暮らし」を始め、全員でインターネットなどで情報を集め、「⼦育て⽀援情報はネット上に豊富にあるが、届くべき⼈に届いていないのではないか」という仮説を⽴てたそうだ。

 その仮説が正しいのかどうか、10月後半に南区民センターで藻岩地区町内会連合会の青木副会長からヒアリングを実施した。

 藻岩地区では子育てサロンや⼦供向けイベントなどは多く開催されているが、第一子を出産して間もないような子育て初⼼者のお母さんの姿は少なめな印象があったため、青木副会長からは「学生たちの仮説は概ね間違っていない」ことと、地域の人が子育て関連の情報を確認するメインの情報源は「回覧板」であることが教えられる。

 学生たちはこのヒアリングから、回覧板という“紙の上の情報”では、忙しい親にはスルーされやすいのではないかと話し、形として⼿に残る“グッズ”であれば⽬に留まり、地域のメッセージが伝わりやすいのではないかと考えた。

 そして、グッズ展開から、⼦育てに協⼒的な街をアピールする地域ブランディングをしようと話がまとまった。

 青木副会長へのヒアリングから 4⽇後、学生たちは川沿第二町内会、第三町内会で開催されたハロウィンイベントに足を運んでくれた。ブランドコンセプト「ないてもい~わよ、もいわ」と地域の⽀え合うイメージを込めたロゴマーク4案を子育て世代のお母さんたちに見てもらい、  ステッカーやキーホルダーにした場合の効果はどれほどありそうかなども直接話を聞いて、調査した。

 ハロウィン会場に⼦どもを連れてきていた 11 名のお⺟さん・お⽗さんにインタビューし、学生たちは次のような意⾒を得る。

・紙よりグッズのほうが確かに⽬に留まりやすい  

・だが「知らないロゴのキーホルダーをいきなりつけたいとは思わない」  

・欲しい⼦育て関連の情報は、レストランのオムツ交換台や駐⾞場の有無など、実⽣活に直結

するもの  

・⽀援よりも“親同⼠のつながり”が欲しい 

 実際に子育てしている世代から話を直接聞くことで、子育て世代が求めていること、どんなことに期待しているかなど、様々な話が聞けたという。しかし、学生たちはこの調査をきっかけに、あることに気付いたそうだ。

 それは、実際に子どもイベントの情報を得られているお母さんたち、足を運べているお母さんたちは、既に地域で子育てを支え合うポテンシャルがある。初めての育児で情報を得られずにいるような企画対象層ではないことに気付いた。

 そこで、学生たちは身近な知り合いで子育て初心者の人にもアンケート調査を行ったところ、「子育てサロンなどの存在は知っているけど、知り合いがいないから行く勇気が出ない」という回答を得ることが出来た。 ここで学生たちは、プロジェクトの核となる【⼈とのつながりが⽣まれることで、初めて自分が支援を受ける対象であることや、“支援を受けてもいいんだ”という⾃分ごと化が起きる】という結論に⾄る。

デザイン学部×看護学部 学部連携だからこそ

 出来上がったデザインを見て、さすがデザイン学部の学生だと驚いた。

 「藻岩らしさが入っていると、もっと手に取りたくなるかも」という意見を活かし、藻岩の象徴である藻岩山、その山が赤ちゃん&抱く親をやさしく包み込むというデザイン。優しい緑と淡いピンクの色展開も見る人を和ませる。

 驚くのはデザインだけではない、ちゃんと2つの看護的視点を取り入れ、考えられている。1つ目は、親の⼼⾝の安寧を守る視点。⾚ちゃんの「泣く」という⼤切な意思表⽰を否定せず受け⼊れ、産後うつやマタニティブルーなど、育児で困りごとがある親にも泣いてもいいんだよという抱え込ませない安⼼感を与えたいという思いがあるそうだ。

 そして、2 つ⽬は、地域包括ケアの視点。地域の⾼齢者の役割づくりにもつながるというものだ。⾼齢者は仕事や育児などが終わり、役割が薄れたり、孤独感を感じてしまったりすることがある。泣いてもい~わよ。と書かれているキーホルダーをつけることで、例えば冒頭の⼩芝居のようにバスなどで、泣いている⾚ちゃんとなだめる親に向けて「泣いていても⼤丈夫ですよ」と無⾔で気持ちを伝えることができるという。「助けたい、⾒守りたい。」という気持ちを表せる逆マタニティマークのような感じと発表していた。  

ポスターやステッカー、キーホルダーにも

 デザインを完成させるだけではなく、学生たちはいかにアピールできるか、グッズ化にも挑戦した。ポスターやステッカー、キーホルダーの試作を行う。これらのグッズを藻岩地区内で目にする機会が増えれば、藻岩地区に暮らす人にとっても、藻岩地区外の人が見ても、藻岩地区は子育てに優しい街なのだと思ってもらえるだろう。

 学生たちが協力し合って、考えてくれた藻岩地区の子育てにおけるブランディング案。これらのアイディアや制作物なども出来る限り、地域の財産とし、地域としても発展、展開に貢献していきたい。

取材:御手洗志帆