Q珈琲

ソシアの駐車場入口横、そっと佇む異次元空間

 

コーヒーカップ

 

 日々変化を続ける札幌の店々。その中でQ珈琲は17年間変わらない姿でそこに佇む。

 初めて見た時は「何のお店?」と思わず声に出してしまう外観。手作りで作られた木の壁やカラフルな看板に道を行く人々は足を止め、店内を物珍しそうに覗き込む。行き先も決めずにふらっと出かけた時、吸い込まれるように入ってしまう、アトリエのような、秘密基地のようなお店。

 

Q珈琲店内

 

 店内に入るとまず大きな焙煎機が目を惹く。Q珈琲の珈琲は、町内会の会議や飲食店でも嗜まれており、親しみある名店だ。天井は珈琲豆が入っていた麻袋で埋められ、大きな椅子が並んでいる。その奥、カウンターの中にマスターは座っている。マスターの背景を彩りよく飾る棚に並んだコーヒーカップは、北海道各地の焼物や有名ブランドのカップまで多種多様。お客さんのイメージに合わせて選ぶこともあるそうだ。

 

 

コーヒーを入れる

 

 マスターはお客さんと積極的に触れ合うわけではない。なんとなく話を聞いてなんとなく応える。そのカウンター分の距離がなんとも心地いい。そのマスターのさっぱりとした考えはお店を始めるときから。

 珈琲屋を営もうと決めたのも、なんとなく珈琲は好きで飽きないから。店舗の場所もなんとなく。偶然、空いていた現店舗の前を通りかかった際に、ここ、と決めたそう。

 「縁もゆかりもこだわりも無いが、ここだからいい。好きにできる」と自由なマスター。そんなマスターだからか、私たちまでのびのびと、時間を忘れてほっと一息できる。

 

コーヒー豆

 

 訪れるお客さんの目的はさまざま。現在ではあまり見なくなった全席喫煙席であるため、煙草を楽しみに来るお父さんがいれば、ふと誰かに話を聞いて欲しくて訪れるおばあちゃんもいるし、変わった風貌の店だからと、ふらっと立ち寄る若者もいる。それでも店長は気にせず自由気まま。

 だから何度も何度も通ってマスターと顔見知りになった時、さらに虜になる。「そうして何度も通っていたお客さんの人生を、時々、見届けることもある」とマスターは言う。

 毎週・毎日来ていた人がふっと姿を消してしまう。親戚の人が店を訪れ、よくQ珈琲の話をしていたと聞く時また時間が過ぎたことに気づく。

 時間が過ぎ町は変わりお客さんも変わる。その中でずっと変わらないQ珈琲だからこそ、この町で大切な役割を担っているのではないだろうか。

 

文・写真:安藤 里(東海大学国際文化学部デザイン文化学科)

 

Q珈琲

 

Q珈琲

札幌市南区川沿6条2丁目3-45  tel. 011-572-2799

営業時間:10:00~19:00

定休日:毎週火曜日

 

※地図に店舗の名前が表示されない、また同じ名前で違う場所が表示される不具合が稀に発生しております。申し訳ありませんが、ご確認の上ご利用ください。