樹木のプロフェッショナル 「集楽園」の6代目社長 小玉三智子さん

 緑の木々や植物は私たちの心を癒してくれる、欠かすことのできない存在。そんな植物のことを知り尽くし、確かな技術と深い知識を持つ樹木のプロフェッショナル、今年で創業121年を迎えた「集楽園」を取材した。

 創業明治35年、札幌がまだ村だったころに開業した造園業の「集楽園」。札幌市南区川沿1条、北ノ沢川の近くにある老舗造園業だ。社屋の前には、六角形・四角形・円形など、さまざまな石灯籠が十数基ならび、歴史と風格を感じられる。

 初代社長は小林銕太郎(てつたろう)氏。明治35年に札幌市南1条西27丁目(現マルヤマクラス)に創業した。銕太郎氏は、明治14年に新潟県に生まれたが、幼い頃に父親をなくし、母親が女手一つで二人の子どもを連れて、新潟から札幌へとやってきた。札幌で母親の姉夫婦の営んでいた「岡田花園」を頼ってのことだった。母親とともに銕太郎氏も岡田花園で働きながら、植木職人として研鑽を磨き、明治35年5月14日に集楽園を設立した。

 創業後は商才を発揮し、大正15年には丸井今井百貨店の5階遊園場の一部に、食堂を開設。そこでは飲食物の販売のほか、盆栽や植木も販売しており、平成13年までの75年間続いたそうだ。現在の川沿地区に社屋を移転したのは、昭和46年のこと。札幌冬季オリンピックの開催に伴い駅前の再開発がすすみ、造園業として営むには手狭になったためだったという。

集楽園の小玉三智子社長は6代目。壁に掛かっているのは昭和天皇に献上されたオンコの盆栽の写真。


 そして現在、6代目の社長は小玉三智子氏。令和元年に集楽園を引き継ぎ社長となった。
 小玉社長は、もともと経理課の社員として集楽園に勤めていたが、前社長により選任されることとなった。親族間継承が主流の業界での、異例の登用により周囲からはとても驚かれたそうだ。小玉社長は、「前社長はよく私を社長にしてくれた。とても光栄なことだった。会社を存続させることと、職人や従業員が快適に働ける環境づくりも大切にしている」と語ってくれた。

 現在は造園部で13名、販売部で5名の従業員がいる。札幌の造園業のパイオニアとして企業や民間・百貨店・ホテル・大学・公園などの造園を数多く手掛けている。藻岩地区近隣での施工事例としては、「北の沢公園」や「東海大学のラベンダー畑」がある。


集楽園には2つの温室があり、1つはレンタル用の観葉植物が管理されている。見学させてもらった時は、一枚一枚の葉を丁寧に拭いているところだった。もう1つの温室は、これから年の瀬に向けて、お正月用の門松の制作が始まるそうだ。約200本の門松が制作される様子は圧巻だろう。12月13日の正月事始めには、集楽園で制作された松竹梅の門松が、丸井今井百貨店の玄関に飾られるとのこと。


会社の入り口には壁面の装飾がされていた。まるで絨毯のような手触りとカラフルな模様。これらは全てコケの一種で空気中の水分を吸い生き続けているそうだ。新たな取り組みとして、商業施設などで季節ごとのディスプレイも手掛けている。ちょうど今の季節、さっぽろ地下街ポールタウンでは、ハロウィンの装飾がされており道行く人々の目を楽しませている。

 最後に小玉社長に集楽園への想いを伺った。

 個人のお客様に関しては、お庭に入らせてもらい作業をしなくてはならない。お庭に入ることは、お家に入ることと同じことなので敬意を払っている。集楽園という名前でお客様からの信頼があり、お客様が不在の時も庭に入り作業させていただけることがありがたく思っている。ここ川沿に集楽園がある、ということが地域の方にとっても安心感を持ってもらえる存在であり続けたい、と話してくれた。

 

 「AIがどれだけ発展しても、人の手でしかすることのできないもの、それが造園の仕事」と語る小玉社長の言葉から、ゆるぎない信念を感じた。

 

(文・写真:松波真子 もいわ塾2期生)

株式会社 集楽園

札幌市南区川沿1条5丁目1-15

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