NPO法人 さっぽろ農学校倶楽部 代表理事・本間利久さん(その2)

 ここは、自然豊かな北の沢地区にあるのどかな圃場。熱い日差しが照り付ける中でも、たまに通り抜けていく風が気持ちいい。

 設立から今年で17年目を迎えた「NPO法人さっぽろ農学校俱楽部」。

 代表理事を務める本間利久さんについては、前回記述の通り。今回は、こちらのNPO法人の活動について簡単に紹介したいと思う。

 一見、単なる貸し農場かと思いきや、そうではない。NPO法人として、「市民と農業をつなぐ」というテーマでの社会貢献活動は多岐にわたる。

 まずは農作物を育てるにあたって欠かせない堆肥だが、なんと円山動物園の象さんの糞で作られたものを使用。そのお礼として低農薬、低化学肥料栽培で作られたトウモロコシの収穫後の茎及びカボチャを象さんに提供し、その代わりにまた堆肥処理された糞をいただく。循環型農業である。

 また、南区まちづくり事業として子ども・シルバー食堂への野菜提供をしたり、札幌市立大学が考案したレシピに対しての食材を提供したりしている。そのレシピは商店街のカフェメニューに加えられた。

 市立札幌藻岩高校で行われる探究活動の「農作業の協働活動」では圃場を提供し、札幌留学生交流センターに滞在する留学生とは農業体験を通して国際・文化交流を実施。コロナ禍においては、留学生の行動規制があったため余剰野菜を寄贈した。

 その他にも、北の沢小学校の児童たちのカボチャの植え付け、収穫体験など、地域の人々との結びつきをたくさん作ってきた。

 

 このNPO法人はどのように成り立っているのだろう。

 まず畑で農作物を作りたいという方に会員になってもらう。会員費年間10,000円。5×9メートルの「農地個別研修区画」を自由に使うために一区画3,000円。どなたでも申し込み可能。作る野菜はたとえば、キュウリ、トマト、ピーマン、ナス、ニンジン、ダイコン、ズッキーニ、枝豆、ジャガイモなど、だいたい5~7種類の野菜を植えている人が多い。中には珍しい野菜を植える人もいる。圃場の周りには電気柵が張り巡らされており、鹿の侵入を防ぐようになっているので安心だ。

 

 特徴の一つとして、毎週日曜日9時から、その日来る人たちでの「共同作業」がある。個人の農地個別研修区画以外に、先ほど述べたトウモロコシや、枝豆、カボチャを圃場の7割ほどに植えてあるのだが、その植え付けや除草を、来た人全員で一斉にするのだ。

 見学に行った筆者もすっかり興味を持ち、会員の申し込みをして野菜を育ててみることにした。そして早速、日曜日の共同作業(除草)に加わった。この日は藻岩高校の生徒さんが数人来ており、「これ雑草ですか?」の質問に対し会員の1人が教えてあげたり、ときおり皆さんの大きな笑い声が聞こえたりして、雑草取りという本来億劫な作業が楽しくはかどる。共同作業が終わると、みな自分の野菜のお世話。立派に育った野菜をおすそ分けしてくださったりもした。

 「市民と農業をつなぐ」だけでなく、「市民同士もつながる」ことを感じた体験であった。

 

 最後に大事なことをひとつ。圃場半分の7割を占めるトウモロコシ、枝豆やカボチャは、毎年8月中旬頃より毎週日曜日10:00~12:00、収穫が終わるまで圃場にて販売をしている。もちろんその日の朝、収穫したばかりの新鮮なお野菜。そこでの売り上げも、NPO法人の大事な財源のひとつである。ぜひ味わってみていただきたい。

(文・写真:宮崎加名代  もいわ塾2期生 2023.9)

 

NPO法人さっぽろ農学校倶楽部 事務局

〒007-0847札幌市東区北47条東1丁目1-30-105

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圃場:札幌市南区北の沢1865-5